『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』と『オマーラ』という女神、その続編

 

 (画像をクリックすると、アマゾンのページに移行します。)

サントラはもちろん、ドキュメンタリー映画としても素晴らしい。

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」はバンド名でもあり、ブランド名でもあり。

その「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の歌姫オマーラ・ポルトゥオンド

 (画像をクリックすると、アマゾンのページに移行します。)

カッコいい…。

と振り返っていたら、「あれから18年」ということで、続編の公開です。

 

公式サイトはこちら
心して拝見したいです。

Enjoy your life!

 

『You Raise Me Up』:勇気と励まし 

 

曲、そして歌唱の素晴らしさだけでなく、
この街角のシチュエーションがいい。

聴いている人たちの様子、表情、時に涙する姿。
わたしも目が潤いました。

誰かの行動が思いがけず、誰かの勇気や励ましとなる。
それはやはり「祝福」だと思います。

Enjoy your life!

 

『夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』:カズオ・イシグロの「開かれなかった扉に関する苦味」

(書影をクリックすると、アマゾンのページに移行します。)

カズオ・イシグロによる2009年発表の短編集(連作5篇)。
(『わたしを離さないで』と『忘れられた巨人』の間に書かれたものです。)

人生の黄昏を、愛の終わりを、若き日の野心を、才能の神秘を、
叶えられなかった夢を描く、著者初の短篇集。

音楽と世界各地の景色が絡みます。
ベネチア、ロンドン、イギリスのモールバンヒルズ、ハリウッド、アドリア海岸のイタリア都市。
登場人物もいろいろ。時代もほぼ同じで、
著者いわく「ベルリンの壁の崩壊(1989年)から、9.11(2001年)まで」を想定しているそう。

「老歌手(Crooner)」
「降っても晴れても(Come Rain or Come Shine)」
「モールバンヒルズ(Malvern Hills)」
「夜想曲(Nocturne)」
「チェリスト(Cellists)」

ヴェネツィアのサンマルコ広場を舞台に、流しのギタリストと、
アメリカのベテラン大物シンガーの奇妙な邂逅を描いた「老歌手」。

しがない英会話教師が大学時代の同級生夫婦のもとを訪問するも、
失態を犯してしまう「降っても晴れても」。

姉夫婦の営む宿泊施設に身を寄せたミュージシャン志望の青年が、
ある観光客の夫婦と出会う「モールバンヒルズ」。

芽の出ない天才中年サックス奏者が、図らずも一流ホテルの秘密階でセレブリティと
共に過ごした数夜の顛末をユーモラスに回想する「夜想曲」。

あるチェリストと彼を指導する女性教師の不思議な関係をつづった「チェリスト」。

(わたしは一つ目の「老歌手」が好きかな。)

訳者あとがきによると、著者は全体を五楽章からなる一曲、
もしくは五つの歌を収めた一つのアルバムにたとえ、
「ぜひ五篇を一つのものとして味わってほしい」と言ったそうです。

わたしはこの五篇を、一日にひとつずつ、五日かけて読みました。
一度に読むのはもったいないような気もして、一篇ずつ余韻も含めて味わい、
「とても長い、いい食事」のようになりました。

彼の本を読んでいる時と、その後しばらくは、
時間の感覚も少し「イシグロ風」になる気がします。
(その「イシグロ風」が説明できなくて、なんとも頼りないことなのですが…。)

この本にまつわる時空には、かつてミュージシャンを目指した彼の、
「開かれなかった扉に関する苦味」も、ちょびっとだけ含まれているのかもしれません。

 

『ピエタ(大島真寿美)』:よりよく生きよ


(書影をクリックすると、アマゾンのページに移行します。)

朗読したいくらいに音楽的な…。

帯には
「ほんとうに、ほんとうに、
わたしたちは、幸せな捨て子だった。」

とあります。

捨て子=「スカフェータ」と呼ばれる「赤ちゃんポスト」に置かれた人たち。

舞台は、18世紀のヴェネツィア。
ゴンドラが運んでいくのは、秘めた恋とかけがけのない友情。
生への限りない祝福に満ちた作品。

アントニオ・ヴィヴァルディ(1678年3月4日 – 1741年7月28日)は、
ヴェネツィア出身のバロック後期の作曲家でありヴァイオリニスト。
カトリック教会の司祭でもあった。

彼は、孤児を養育するピエタ慈善院で、
音楽的な才能に秀でた女性だけで構成される〈合奏・合唱の娘たち〉を指導していた。
(その建物は、現在はホテル「Hotel Metropole」になっているそう。)

史実を基に、女性たちの交流と絆を瑞々しく描きだした傑作です。

***

その頃、ヴィヴァルディ先生は、おいくつだったろう。二十代半ばくらいだろうか。音楽的評価はとうに高かったはずなのに、わたしたちがヴァイオリンの稽古をしている部屋にふらりと現れると、ヴァイオリンは楽しいかい? と気さくに訊いたのだった。

(中略)

ヴィヴァルディ先生の質問に、楽しいです、とわたしたちが生真面目に答えると、ヴィヴァルディ先生が、わかるよ、と言った。楽しいですっていう音が廊下に聞こえてたからね。きみたちはなかよしなんだね。

***

数十年後のある日、教え子のもとに、恩師の訃報が届く。
オーストリアのウィーンで没したのだ。

そして、ある一枚の楽譜の謎に導かれ、歴史的な物語の扉が開かれる。

最後の数ページは涙。
著者は、多分あの「時空を超える方法」を用いて、これを書いたのだと思う。

切に、映画化希望!

***

むすめたち、よりよく生きよ。
たましいの光、うつくしい光、天まで届け。

***

本の中に何度も出てくる“L’estro Armonico”とは、
ヴィヴァルディが作曲した全12曲からなる協奏曲集『調和の霊感』。

(画像をクリックすると、アマゾンのページに移行します。少しずつ試聴できます。)

バチカンにあるミケランジェロ(1475-1564)のピエタ像は1500年に完成したらしいから、
ヴィヴァルディ(1678-1741)は見ていただろうと想像する。

何度でも読みたい本のひとつです。