レディー・ガガの左上腕内側には、リルケの『若い詩人への手紙』の一節が、
ドイツ語でタトゥーとして入っているそうです。
2行目に小さな文字で、”12-18-1974″とあるのは、19歳で亡くなったという彼女のおばさんの命日。
(また、ニューヨークにある彼女の父親のレストランの名前でもあるとか?)
レディー・ガガの左上腕内側のタトゥーのフレーズは、この本では15ページ目にあります。
もしもあなたが書くことを止められたら、死ななければならないかどうか、
自分自身に告白して下さい。
何よりもまず、あなたの夜の最も静かな時刻に、
自分自身に尋ねてごらんなさい、私は書かなければならないかと。
深い答えを求めて自己の内へ内へと掘り下げてごらんなさい。
このフレーズの後には「答え次第では覚悟が必要ですよ」ということが、
かなりの言葉を尽くして書かれています。
ライナー・マリア・リルケ(1875年 – 1926年)の『若き詩人への手紙』は、一人の青年(詩人志望のフランツ・カプス)が直面した生死、孤独、恋愛などの精神的な苦痛に対して、リルケが深い共感に満ちた助言を書き送ったもの。
『若き女性への手紙』は、子供との二人暮しを支えるために働きながらリルケの詩を読んでいたリーザ・ハイゼが長い苛酷な生活に臆することなく大地を踏みしめて立つ日まで書き送った手紙の数々。
リルケの誠実な返答や芸術についての考察は、わたしたちにも励ましと力を与えてくれます。
(おそらく、レディー・ガガもそう感じたのではないでしょうか。)
リルケと言えば、もう1冊思い出す本があります。
イヴ・サンローラン(1936年 – 2008年)のパートナーだった、ピエール・ベルジェ(1930年 – 2017年)の回顧録『イヴ・サンローランへの手紙』です。
この本の中に見つけたリルケの言葉は…
「栄光は誤解の総和だ。」
リルケの『ロダン論』の一節らしいのですが、イヴ・サンローランの成功とその周辺にあったものを、長年にわたり目撃し続けた人には、「まさに!」と感じられたのでしょう。
栄光の表と裏。光と影。理解と誤解の狭間。実と虚無。すべてをひっくるめて、そう、ひっくるめて何なのでしょう…。「宇宙は空っぽであり、何でもある」、でしょうか。