岩波文庫の初版は、昭和33年。
ゲーテ(1749-1832)の『ファウスト』は、彼のライフワークと言っていいでしょう。
ゲーテは、この大作を24歳で書き始め、82歳で書き終え、83歳で亡くなりました。
天才をもってしても、この詩劇の完成にほとんど全生涯を要したのです。
馬琴先生の『南総里見八犬伝』(28年の執筆期間)や、
マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』も長篇ですが、
ゲーテの『ファウスト』における24歳から82歳というのはあまりにも長い執筆期間ですね。
(その間に他のものも書いたでしょうが…。)
それにしても。
この長い作品の1ページずつが、ちぎって食べてしまいたいくらいの美しさです。
悪魔や博士や道化師や魔女、皇帝や天使など、多くの登場人物が語り、歌い、踊ります。
中には、「空想的花輪」や「空想的花束」という何やら叶姉妹的なものさえ出てきます。
これはゲーテの脳内にある舞台で繰り広げられた「やりとり」を書き取ったものなのでしょう。
彼はこれを書かなかったら、頭がおかしくなったのでは?
紙に落とすことで、かろうじて生き永らえたのかも、と想像するのです。
(だから、書き終えて亡くなったとか…。)
「いやはや、芸術は長く、われらの生命は短いのでございます。」
ほんま…。
(『書きたがる脳』:その傾向の理由という記事も、ぜひご覧ください。)
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『ファウスト』は長くて大変という方、こちらはどうですか?
「支配したり服従したりしないで、それでいて何物かであり得る人だけが、
ほんとに幸福であり、偉大なのだ。」
「耳ある者は聞くべし。金ある者は使うべし。」
あはは。
ところで。水木しげるさんもゲーテがお好きだったようですね。
紹介しておきます。